「 ね、ちゅーってして 」
 
「 はぁ!? 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

電話越しに聞こえる声
人を小ばかにしたような、楽しそうな声
 

「 離れてても、ちゅぅされた気分になるように 」
 
「 ・・つーか目の前にいんだろうが・・・ 」
 

目の前で笑顔を見せ、嬉しそうに手を振る
オレンジ頭のムカツク奴
何時もヘラヘラしていて、何を考えているのかわからない奴
何が楽しくて、近くにいるのに電話しているのか
話がしたいのなら、直接話せばいいだろうに
 

「 えー、折角買ったんだから活用しようよー 」
 
「 家帰ってからでもいいだろーが 」
 
「 オレ、電話って好きじゃないんだよね 」
 
「 はぁ? 」
 

じゃあどうして電話を使って話をしているのか
つくづく理解不能な奴だ
好きじゃないなら直接話せ!
 

「 電話越しって、何考えてるかわかんないジャン? 」
 

電話越し
どんなに楽しそうに話をしていても、表情が見えない分
本当に楽しんでいるのかはわからない
もしかしたらその相手は、嫌々話をしているのかもしれない
そう考えると、便利のようで、不便でならない
不安にかられながら電話するなんて、情けない話だが
今の奴らは嘘でもいいから、誰かと楽しく話しをしていたいのだろう
携帯電話がバカみたいに売れるのは、寂しいからなのだろう
それだけで満足するのもまた、情けない話だ
 

「 ・・・俺も、好きじゃねぇな・・・ 」
 
「 でしょ?でもさー 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 我慢出来なくなったら、いんじゃない? 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ヘラっと笑って手を振ってみせる、オレンジ頭のムカツク奴
何を考えているのか、理解不能なムカツク奴
だけど時々意見が合ってしまう、ムカツク野朗
どんなにムカついていようがきっと俺は
あっさりと電話を取るだろう
つくづく嫌な野朗だ