嫌いだったんだ
 
何時も一人で騒がしいしへらへら笑ってるし
 
煩かったんだ
 
人が一生懸命創った壁を平気で壊すし
 
土足で人の中へと入って来るし
 
大嫌いだったんだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 木更津〜! 」
 

また来た
五月蝿い、煩い、うるさい
僕がココに来てから毎日のようにやってくる
毎日毎日僕のとこに来て、今日の勉強はどうだったとか、僕はどうだったとか
笑いながら、楽しそうに話をする
それがどれだけ僕に不満と怒りを与えているのか、わかっているのか?
いや、きっとわかってはいないんだろう
冷たい態度を取っているというのに、性懲りもなくやってくるのだから
鈍いのか、嫌がらせなのか
止めて欲しい
 

「 何 」
 

この、この怪訝そうな声、あからさまに否がる、声、コエ
キミは気がつかないのか?気がつかないフリなのか?
僕の声は、聴こえているのか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 ねぇ何で僕とアイツ組ませたの? 」
 

以前観月に訊いたことがある
別にダブルスが嫌だったわけじゃない、足手まといのアイツが嫌だったんだ
わーわー五月蝿いクセに、体力が無くて、打たれ弱くて、直ぐに限界になる
それなのにアイツは、打つ、打つ、打つ!
 
 
 
 
 
 
 

「 きっと助けてくれますよ 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

毎日訪れる、不平と、不満と、痛みと
息つく暇もないぐらい目まぐるしく廻る毎日に、嫌気が差して吐き気がする
止まらない涙と、全ての不満を吐き出そうと頑張るその身体は、限界らしかった
 

「 木更津ってつまんねぇよな 」
 

どうでもいい、誰かに、大衆に、否定されたこの可哀想な精神は
全てを否定しようと、どうでもいい、誰かに、大衆に
どうでもいい、と投げかける、切り捨てる
それでもアイツは僕のところに来るんだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 何で僕に構うのさ 」
 

ここまできてやっと出た、僕の中の最大の、不平、不満、痛み
これ以上の文句は、多分無いだろう
 
 
 
 
 
 
 

「 だって何時も 」
 
 
 
 
 
 
 
「 寂しそうだーね 」
 
 
 
 
 
 
 

僕の声は聴こえていたのか?
不平不満痛みを無理やり胸の中に詰め込んで、自らを限界に追いやって
苦しい苦しいと叫んでいたこのコエに
キミは気づいていたのか?
 
 
 
 
 
 
 

「 それにオレ木更津と 」
 
 
 
 
 
 
 

僕がどんな球を打ったって、キミは限界になるまで打ち続けて
僕がどんなコエを投げかけたって、キミは全てを飲み込んで
僕の中の不平不満痛みなんて、くだらないものを掃き捨てるんだ
そして、そんなくだらないものを大事に抱えていたのに
大事でくだらないものを無理やり捨てようとするキミが
僕は、怖くて、好きで、大嫌いだったんだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 淳〜! 」
 
「 何? 」
 
 
 
 
 
 
 

嫌いだったんだ
 
何時も一人で騒がしいしへらへら笑ってるし
 
煩かったんだ
 
人が一生懸命創った壁を平気で壊すし
 
土足で人の中へと入って来るし
 
大嫌いだったんだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それでも僕は、キミのコエが好きなんだ、大好きなんだ
どうでもいい誰かや大衆のコエも、不平不満痛みのくだらないコエも
もうどこにも存在などしなくて、今ココに聴こえているのは
キミのコエと、僕のコエと、二つだけ
あの時くれた、どうでもいい、くだらないキミの声は
僕の奥底にあったコエを、外へと引っ張りだしてくれたんだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 一緒に遊びたいだーね! 」