「 うぅ〜・・・ 」
 
「 なんやのそない唸って 」
 
「 頭イタイ 」
 

頭が痛い
痛くて痛くてたまらない
今にも破裂してしまうのではないか
そんな考えまで浮かぶ程、痛い
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 そういやぁ最近寝てないよな 」
 

そう、そうなのだ、その通りなのだ
毎日毎日寝ることが日課のハズの、この俺、芥川慈郎が
寝ていないのだ
これは天変地異の前兆か、これが天変地異なのか?
おかげで、寝ている時よりも何もできない
寝ぼけている方が全然マシだ!
痛くて痛くて、涙まで出てくる始末
誰かどうにかしてください
俺を助けて!
 

「 悩み事でもあんのか? 」
 

悩み事ならある
それはズバリ、寝れないことだ
同道巡りの考え
溜息が出てくる
あまりの深刻さに、周りの人達が案を巡らす
 

「 病院行くとか・・・ 」
 
「 ミント水とか飲んで落ち着くとかは? 」
 
「 いっぱい運動したらええねん 」
 

色々な案が飛び交う
一生懸命考えてくれた皆には悪いが、どれも試す気はなかった
眠れない原因は、はっきりとわかっていた
だが、あまりにもくだらない理由
話す気にもなれなかった
 

「 いいよ、俺、寝るよ 」
 

不貞腐れたようにして横になる
頭が痛くて死にそうなんだ、放っておいてよ
横になっても、寝れるわけじゃないのだが
一人になったら頭の痛さも、少しは和らぐだろう
 
 
 
 
 

静かだ
 
人の声とか
 
動きとか
 
感じないぐらい
 
静かだ
 
 
 
雲が流れてるー
 
寝ようかな?
 
寝れるかな?
 
 
 
 
 

「 おい 」
 
 
 
 
 

ぼーっと空を眺めていたら、頭の上から声がした
目線を声がした方へ移すと、そこには氷帝の王様
跡部が、白い箱を持って立っていた
 

「 ・・・・何? 」
 
「 ホラ 」
 
「 何、これ 」
 
「 開けたらわかるぜ 」
 

白い箱を受け取り、中身を確かめる
覗いたそこには、3つ、とても甘そうなお菓子
 

「 シュークリーム! 」
 
「 あぁ 」
 
「 何々?めっずらっC−!! 」
 
「 お前、最近寝てないんだろ? 」
 
「 うん 」
 
「 甘い物は疲れを癒すらしいからな 」
 
「 うん? 」
 
「 食べとけ 」
 
 
 
 
 

俺が寝ていないってのは、皆に知られていたらしくて
それは跡部の耳にも入っていたらしくて
跡部は眠れる方法を真剣に考えていたらしくて
結果、甘い物にたどり着いたらしくて
甘い甘いシュークリームを俺の元に届けてくれた
 
 
 
 
 

「 お前の寝顔がないと、あいつら落ちつかねぇみてだからな 」
 
 
 
「 ・・・・俺も落ちつかねぇし 」
 
 
 
 
 

小さな声で言ったその言葉は、上手く俺の耳に入ってきて
何だかくすぐったくて、恥ずかしくて、嬉しくて
今日からまた、今まで通りの寝顔をみせられそうだなぁ
なんて考えてたら、いつの間にか
頭の痛みは取れていた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 跡部ー 」
 
 
 
「 なんだ? 」
 
 
 
「 おやすみ 」