ハ 
 
 
 
色ハ匂ヘド 散リヌルヲ ワガ世誰ソ 常ナラム
 
有為ノ奥山 今日越エテ 浅キ夢見シ 酔ヒモセズ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「 ・・・コイハウタって知ってる? 」
 
「 ?何だーね?それは 」
 
「 ユメ 」
 
「 夢かい 」
 

ユメを視た
何の変哲も無い、ただのユメを
なのにそのユメを見た後の僕は、汗びっしょりで
何だかとても泣きたくなるようなユメだった
 

「 ヘンなユメだったんだ 」
 
「 ふぅん 」
 

背中を見送る俺
本当は待って!って言って、止めたかった
ユメの話を聞いて欲しかった
だけどそんな願いは一生伝わらず、僕は一人でユメを視る
 
 
 
 
 

恋ハ唄
 
 
 
 
 

ユメの中の僕は、時折フラッシュバックに襲われる
初めて出会う女の子
道の真ん中で、小さなその声を必死に振り絞って歌い続ける
恋の詩
誰もそのコエを聴くことは無く、横目も振らずに歩き続ける
その姿に、哀れみと、痛みと、優越感を感じてしまうんだ
そんなコエ誰も聴かないよ
誰もキミを看付けたりはしないよ
しないんだ
 

「 名前は? 」
 
「 キサラヅアツシ 」
 

名前なんて本当はどうでも良い筈なのに
女の子は一つ笑顔を見せる
そこでユメへと戻ってくるんだ
 
 
 
 
 

「 僕のこと好き? 」
 
「 うん 」
 

ずるい、ずるいずるいずるい
キミは自由に言葉を発しているのに、僕は何も言えないんだ
言いたくないんだ、言えないんだ
息苦しくて、苦しくて、胸がいっぱいで大変なんだよ
フラッシュバックの中の女の子が僕に言った
 

「 恋ハ唄 」
 

何が何だかわからなかったのに
ユメの中の柳沢はあっさりと答えを述べた
 
 
 

「 恋ハ唄は死の詩だ 」
 
 
 

「 お前は死ぬ 」
 
 
 

死の宣告を告げられてからと言うもの、ユメの中の僕は怯えていた
苦しいのは、泣きそうなのは、誰の所為?
自分の所為?
 
 
 
 
 

色ハ匂ヘド 散リヌルヲ ワガ世誰ソ 常ナラム
 
 
 
 
 

どんなに想いが強くても、キミには届かないんだ
それでも僕は叫び続ける
コエを聴かせようと、歩みを止めようと
歌い続ける
喉が枯れるまで、声が張り裂けるまで、胸が爆発するまで
死ぬのは誰の所為だ
どう考えても、キミの所為だ
 
 
 
 
 

有為ノ奥山 今日越エテ 浅キ夢見シ 酔ヒモセズ
 
 
 
 
 

今頃女の子は笑っているハズ
僕の姿に、哀れみと、痛みと、優越感を感じながら
どっちもどっちだから、二人とも何も言えないだろ
僕もその子も同じなんだ
浅はかな希望や夢を抱きながら
決して叶う筈もないと想いながら
それでも歌い続けてるんだ
恋の詩を
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

色ハ匂ヘド 散リヌルヲ ワガ世誰ソ 常ナラム
 
有為ノ奥山 今日越エテ 浅キ夢見シ 酔ヒモセズ
 
 
 

 ハ